2017年7月11日火曜日

岸見の石風呂

今は昔、岸見という地の話でございます。岸見には良質な材木があり、とあるお寺の建設に利用されることとなりました。岸見の民達は森の中に入り木々を切り、川へ運び、その川を利用してお寺が建てられる地へと運んでいきました。そうした仕事は非常に重労働で、民達は日に日に疲弊していきました。民達のそうした様子を見かねた重源和尚は、民達を風呂のリラクゼーション効果によって、フィジカル・メンタル的疲労を取り除いてあげようと考えました。そうして重源和尚は材木が採られていた周辺の村々に「石風呂」を作りました。石風呂に入り、人々は身体の中にたまった老廃物を汗と共に外へと流し、薬草の良質な成分を身体中に取り入れることで癒されたのです。そうして民達はよりいっそう労働に励み、お寺が完成しました。そのお寺こそが東大寺なのです。

当時は100個以上もの石風呂があったようですが、現在は2個しか残っておらず、一般の人が入ることのできるものはそのうちの一つだけとなっています。現在でも入ることのできるその石風呂は地元の人々によって保存されています。石窯のなかに薪を運び、燃やし、灰をかき出し、薬草とむしろを敷く。これらの作業は朝7時に開始され、人々が石風呂の中に入ることができるようになるまで3時間の作業です。薪は石釜の中で一気に燃やします。すると煙がモクモクと石釜がある家屋の中を充満させ、中は炎の灯りしか見えなくなります。薪が燃やされ、石釜の中が十分熱くなるまでおよそ2時間30分。すべての薪が炭あるいは灰になったらそれらをかきだすための道具を用いて、すべて外にかき出します。一部の炭は石釜の側にある囲炉裏の中に入れられ、後々の楽しみのために採っておきます。すべてかき出されたら、防火服を着用した人が薬草(セキショウ、ヨモギ、ワラ)を手にもって中に均等に敷きます。外に置いたままの薬草はそれほど香りがする訳ではありませんが、熱がこもった石釜の中に敷いた瞬間に、香りが一気に出てきます。そしてその後30分ほど放置すると人が入ることのできる温度に下がり、いよいよ入浴可能となります。石釜の中には薬草の上にむしろと毛布が敷いてあるのですが、初めの頃はそんなものおかまい無しに床が熱いため、長時間居座り続けるのは非常に大変です。何度も人が出入りするうちに中の温度も下がっていき、2時間ほどするとずっと中で寝ていることができるほどになります。
以上石風呂の説明。
茶粥の話はまた今度。

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